業務改善の進め方を解説 ― 中小企業が最初の1か月でやること
シクミヤの福田です。当記事では、業務改善の進め方を、社内にIT担当がいない中小企業が最初の1か月でやることに絞って解説します。
- はじめに
- 業務改善の進め方 6つの手順
- 1週目:担当と期間を決め、今の仕事を書き出す
- 2週目:かかっている時間を測る
- 3週目:1つ選び、ECRSの順で直し方を決める
- 4週目:試して、前と後を比べる
- 進め方でつまずきやすいところ
- まとめ
はじめに
業務改善とは
業務改善は、仕事のやり方を見直して、ムダな手間や待ち時間を減らすことです。ITを使う改善だけでなく、手順を入れ替える、担当を分け直す、やめても困らない作業をやめる、といった改善も含みます。
改善でよく使う言葉に「ムリ・ムダ・ムラ」(3M)があります。ムリは人や時間に対して負担が大きすぎること、ムダはなくても困らない作業、ムラは日や人によって手間や出来がばらつくことです。
当記事の結論
進め方の手順そのものは、どの解説でも大きくは変わりません。「準備する → 今の仕事を見える化する → 計画を立てる → やってみる → 振り返る → 練り直す」の流れです。
中小企業でつまずくのは、手順を知らないことより、最初の1か月で何をすればいいかが決まらないことです。そこで当記事では、最初の1か月を週ごとに分けて、やることを具体的に書きます。
業務改善の進め方 6つの手順
厚生労働省は、介護分野の生産性向上の取組として、改善活動を6つの手順で示しています。介護向けの資料ですが、業種を問わず使える形なので、中小企業の事務や現場の仕事に置き換えて整理します。
| 手順 | 厚生労働省の示す内容(要約) | 中小企業での置き換え |
|---|---|---|
| 1 準備 | チームを作り、リーダーを決める。経営層が取組の開始を宣言する | 担当を1〜2人決め、社長が「この1か月はこれをやる」と全員に伝える |
| 2 見える化 | 課題を洗い出し、業務を数字で把握する | 今の仕事を書き出し、かかっている時間を測る |
| 3 計画(Plan) | 課題を絞り込み、取組と役割を決める。3か月程度を目安に計画を立てる | 直す作業を1つ選び、直し方と期限を決める |
| 4 実行(Do) | まず取り組み、試行錯誤する。小さな成功を作る | 決めた直し方で、実際の仕事を回してみる |
| 5 振り返り(Check) | 途中経過を把握し、成果を検証する | 前と後の時間を比べる |
| 6 練り直し(Action) | うまくいった点・いかなかった点を分析し、1年を目安にくり返す | 次に直す作業を決める |
厚生労働省の手順では、1回の取組期間を3か月程度、くり返しを1年程度としています。当記事の「最初の1か月」は、この1回目のうち手順1〜4の入口に当たります。
- 参考 : 厚生労働省 介護分野における生産性向上ポータルサイト「改善活動の標準的なステップ」(2026年10月確認)
1週目:担当と期間を決め、今の仕事を書き出す
担当は1〜2人、期間は1か月
最初に決めるのは、誰が進めるかと、いつまでにやるかです。社内にIT担当がいない会社では、現場の仕事をよく知っている人を1人、できれば社長か役員をもう1人にします。
厚生労働省の手順でも、最初に「経営層から取組開始を宣言する」ことが挙げられています。担当者だけに任せると、通常の仕事が優先されて止まりやすいためです。週に1回、15〜30分でよいので、担当と社長が進み具合を確かめる時間を先に予定に入れておきます。
仕事は「作業の単位」で書き出す
次に、担当の周りの仕事を書き出します。部署全体を一度に洗い出そうとすると、それだけで1か月が終わります。最初は1つの部署か、1人の担当者の仕事に絞ってください。
書き出すときは「経理」「受注」のような大きなくくりではなく、「請求書を作る」「入金を確かめて台帳に付ける」のような、1回で終わる作業の単位にします。直し方を考えるとき、大きなくくりのままだと手がつけられないためです。
| 書く項目 | 書く中身 |
|---|---|
| 作業の名前 | 「〇〇を〇〇する」の形で1行 |
| 頻度 | 毎日・毎週・毎月・年に数回 |
| やる人 | 名前。1人しかできない作業には印を付ける |
| 使うもの | Excel・紙・メール・業務ソフトなど |
| 前後の作業 | 何を受け取って始め、誰に渡して終わるか |
この表は、あとで手順書を作るときの下書きにもなります。
2週目:かかっている時間を測る
測らないと、改善したかどうかが分からない
業務改善の進め方の解説では「現状を把握する」と書かれることが多いのですが、中小企業でいちばん抜けやすいのが、時間を数字で残すことです。前の時間が分からないと、直した後に「楽になった気がする」以上のことが言えず、次の改善に社内の理解が得られにくくなります。
測り方は、手間の少ないものから
| 測り方 | 向いている作業 | 注意点 |
|---|---|---|
| 作業の前後に時刻を書く | まとまった時間をかける作業(請求書づくり、月次の集計など) | 途中で電話などに呼ばれた時間は引いて書く |
| 1日の終わりに、作業ごとのおおよその時間を書く | 細切れの作業が多い仕事 | 記憶に頼るので、多めにも少なめにもなる。1週間続けてならす |
| 件数と1件あたりの時間で計算する | 同じ作業をくり返す仕事(伝票の入力など) | 数件だけ時間を計り、件数をかける。件数は既存の記録から数える |
正確さより、同じ測り方で前と後を比べられることのほうが大事です。測り方を決めたら、4週目にも同じ方法で測ります。
毎月の作業は、2週目に発生しないことがあります。その場合は、前の月にやったときの記憶と、担当者の残業の記録などから、おおよその時間を書いておきます。
時間と一緒に「困っていること」も聞く
時間を書いてもらうときに、「その作業でいちばん面倒なところ」も一言ずつ書いてもらいます。同じ数字を2回打っている、前の人の作業を待っている、毎回やり方を人に聞いている、といった答えが、3週目に直し方を考える手がかりになります。
3週目:1つ選び、ECRSの順で直し方を決める
直す作業は1つだけ選ぶ
書き出した作業と時間がそろったら、最初に直す作業を1つ選びます。毎月決まって発生する、担当が1人しかいない、同じ数字を何か所にも入れている、といった作業が向いています。選び方は「攻めのITと守りのITの違い」の記事でも表にまとめています。
反対に、最初の1つに向かないのは、年に1回しかない作業と、やり方がまだ人によって違う作業です。前者は効果を確かめるまでに1年かかり、後者は先にやり方をそろえないと直し方が決まりません。
ECRSの順で考える
直し方を考えるときによく使われるのが「ECRS(イクルス)」です。業務改善の4つの考え方の頭文字で、上から順に考えるのが基本とされています。
| 順 | 考え方 | 問いかけ | 例 |
|---|---|---|---|
| E | Eliminate(なくす) | その作業をやめたら、誰が困るか | 誰も見ていない報告書の作成をやめる |
| C | Combine(まとめる) | 似た作業や、分かれている作業をまとめられるか | 2つの台帳に入れている同じ数字を、1つの台帳にまとめる |
| R | Rearrange(入れ替える) | 順番や担当を変えると、待ち時間や手戻りが減るか | 確認を最後にまとめず、入力したその場で確かめる |
| S | Simplify(簡単にする) | 残った作業を、もっと簡単にできるか | 手で写していた作業を、関数やマクロで自動にする |
順番に意味があります。ITを使う自動化は、多くの場合いちばん最後のSに入ります。なくせる作業を自動化しても、手間のかかる仕組みが1つ増えるだけです。
「このツールを入れれば改善できるはず」と道具から入ると、今の仕事のやり方をそのまま道具に写すことになりがちです。E・C・Rで手順を整えてから、残ったSの部分にExcelの関数・マクロ・GASなどを当てはめるほうが、作るものも小さく済みます。
直し方は「誰が・いつから・何を変えるか」で書く
直し方が決まったら、1枚のメモにします。書くのは、変える作業、新しいやり方、誰がやるか、いつから始めるか、うまくいかなかったときに元に戻す方法の5つです。元に戻す方法を書いておくと、現場の人が新しいやり方を試しやすくなります。
Sの部分をスプレッドシートとGASで自動にする場合、どこまで自分たちで作れるかは「スプレッドシートの自動化(GAS)は自分でできる?」で整理しています。
4週目:試して、前と後を比べる
実際の仕事で回してみる
決めた直し方で、実際の仕事を回します。厚生労働省の手順でも「まずはとにかく取り組み、試行錯誤を繰り返す」とされています。最初から完璧なやり方を目指さず、やってみて困ったところをその都度メモします。
新しいやり方は、最初の数回は前より時間がかかることがあります。慣れるまでの時間と、やり方そのものの問題を分けて見るために、困ったことのメモには「慣れの問題か、やり方の問題か」を書き分けておきます。
2週目と同じ方法で、時間を測る
2週目と同じ測り方で、直した作業の時間を測ります。比べるときは、1回あたりの時間だけでなく、月に何回あるかをかけた月あたりの時間にします。月に1回の作業と毎日の作業では、同じ10分の短縮でも重みが違うためです。
| 比べる項目 | 見るところ |
|---|---|
| 月あたりの時間 | 前と後で、どれだけ減ったか |
| ミス・手戻り | 打ち間違いや、やり直しが減ったか(増えていないか) |
| やれる人の数 | 担当以外の人でも、手順を見ればできるようになったか |
| 困ったことのメモ | やり方の問題として残ったもの。次の練り直しで扱う |
空いた時間の使い道を決める
時間が減ったら、その時間を何に使うかを社長と担当で決めます。決めないと、空いた時間はほかの細かい作業で埋まり、改善した実感が残りません。
1か月が終わった時点で、次に直す作業を1つ決めておくと、2か月目以降は同じ流れをくり返すだけになります。
進め方でつまずきやすいところ
全部を洗い出すところで止まる
会社全体の業務を一覧にしてから始めようとすると、一覧づくりだけで数か月かかり、その間に何も変わりません。最初の1か月は1つの部署か1人の担当に絞り、2回目以降に範囲を広げていくほうが、結果的に早く全体が見えてきます。
現場が「やらされている」と感じる
上から直し方を決めて渡すと、現場の人は新しいやり方を自分のこととして扱いにくくなります。厚生労働省の資料でも、業務改善では意見を言いやすい場を作り、出された意見を否定しないことが大切だとされています。2週目に「困っていること」を聞くのは、時間を測るためだけでなく、直し方を現場の言葉から作るためでもあります。
- 参考 : 厚生労働省 介護分野における生産性向上ポータルサイト「業務の改善活動の支援・促し役」(2026年10月確認)
改善したやり方が、また1人の人に寄る
よくあるのが、改善を進めた担当者だけが新しいやり方を分かっている状態です。マクロやGASで自動にした場合は特に、作った人しか直せない仕組みになりやすくなります。新しいやり方は、1週目に作った表を下書きにして、手順書の形で残してください。
まとめ
当記事のポイントをまとめます。
- 業務改善の進め方は「準備 → 見える化 → 計画 → 実行 → 振り返り → 練り直し」の6つの手順が土台になる
- 最初の1か月は、担当と期間を決めて書き出す・時間を測る・1つ選んで直し方を決める・試して比べる、の4週で進める
- 前と後を同じ方法で測り、月あたりの時間で比べる
- 直し方はECRSの順(なくす → まとめる → 入れ替える → 簡単にする)で考え、ITの道具はその後で選ぶ
- 空いた時間の使い道と、次に直す作業を決めてから、1か月を終える